巨大な四角いビルディングである。 窓という窓が残らずピッタリと閉め切ってあって、室(へや)という室が全然、暗黒を封じている。 その黒い、巨大な、四角い暗黒の一角に、黄色い、細い弦月が引っかかって、ジリ、ジリ、と沈みかかっている時刻である。 私はその暗黒の中心に在る宿直室のベッドの上に長くなって、隣室と境目の壁に頭を向けたまま、タッタ一人でスヤスヤと眠りかけている。