ふじんたんさく |
夫人探索 |
冒頭文
一 「百万円あったら、ああしよう……こうしよう」 と空想していた青年中村芳夫は、思いもかけぬ伯母(おば)の遺産を受け継いで一躍百万長者になった。 芳夫は早速数万円を投じて素破(すば)らしい邸宅を建てた。そこに美姫と、美酒と、山海の珍味を並べて、友達を集めて昼夜兼行の豪遊をこころみたために、百万円は瞬く間に無くなって、些(いささか)なからぬ借財さえ出来た。その抵当に邸宅を取られた彼
文字遣い
新字新仮名
初出
「探偵趣味」1927(昭和2)年3月
底本
- 夢野久作全集3
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1992(平成4)年8月24日