一 チエ子は奇妙な児(こ)であった。 孤児院に居るうちは、ただむやみと可愛いらしい、あどけない一方の児であったが、五ツの年の春に、麹町(こうじまち)の番町に住んでいる、或る船の機関長の家庭(うち)に貰(もら)われて来てから一年ばかり経つと、何となく、あたりまえの児と違って来た。 背丈けがあまり伸びない上に、子供のもちまえの頬の赤味が、いつからともなく消えうせて、透きと