くものいと |
蜘蛛の糸 |
冒頭文
一 ある日の事でございます。御釈迦様(おしゃかさま)は極楽の蓮池(はすいけ)のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮(はす)の花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色(きんいろ)の蕊(ずい)からは、何とも云えない好(よ)い匂(におい)が、絶間(たえま)なくあたりへ溢(あふ)れて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。 やがて
文字遣い
新字新仮名
初出
「赤い鳥」1918(大正7)年7月
底本
- 芥川龍之介全集2
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1986(昭和61)年10月28日