キキリツツリ
キキリツツリ

冒頭文

露子さんは継子(ままこ)で、いつもお母さんからいじめられて泣いてばかりいました。 夜は毎晩おそくまで御飯のあと片付けをしたり、お使いに遣られたりしました。寝る時はまた、お台所の際(きわ)の板張りの上に薄い薄い蒲団(ふとん)を敷いて、たった一人ふるえながら寝なければなりませんでした。 ようやく寒いつめたい冬が過ぎてあたたかくなりましたので、露子さんは大喜びでした。けれどもそれと一

文字遣い

新字新仮名

初出

「九州日報」1923(大正12)年2月

底本

  • 夢野久作全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年5月22日