まさゆめ |
正夢 |
冒頭文
昔、ある街の町外れで大勢の乞食が集まって日なたぼっこしながら話しをしておりましたが、その中(うち)で一人の若い乞食が大きな声を出して申しました。 「おい、皆聞け。俺が昨夜(ゆうべ)他家(よそ)の軒下で寝ていると、白い着物を着た人が来て、俺について来いと云った。おれは何でもこれは福の神に違いないと思って従(つ)いて行って見ると、この街の真中の四辻に来て神様は、地面(じべた)の上を指してそのまま
文字遣い
新字新仮名
初出
「九州日報」1919(大正8)年4月
底本
- 夢野久作全集1
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1992(平成4)年5月22日