しらがこぞう
白髪小僧

冒頭文

第一篇 赤おうむ     一 銀杏(いちょう)の樹 昔或る処に一人の乞食小僧が居りました。この小僧は生れ付きの馬鹿で、親も兄弟も何も無い本当の一人者で、夏も冬もボロボロの着物一枚切り、定(きま)った寝床さえありませんでしたが、唯(ただ)名前ばかりは当り前の人よりもずっと沢山に持っておりました。 その第一の名前は白髪(しらが)小僧というのでした。これはこの小僧の頭が雪のように白く輝

文字遣い

新字新仮名

初出

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

底本

  • 夢野久作全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1992(平成4)年5月22日