メンスラ ゾイリ |
Mensura Zoili |
冒頭文
僕は、船のサルーンのまん中に、テーブルをへだてて、妙な男と向いあっている。—— 待ってくれ給え。その船のサルーンと云うのも、実はあまり確かでない。部屋の具合とか窓の外の海とか云うもので、やっとそう云う推定を下(くだ)しては見たものの、事によると、もっと平凡な場所かも知れないと云う懸念(けねん)がある。いや、やっぱり船のサルーンかな。それでなくては、こう揺れる筈がない。僕は木下杢太郎(きの
文字遣い
新字新仮名
初出
「新思潮」1917(大正6)年1月
底本
- 芥川龍之介全集1
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1986(昭和61)年9月24日