情報検索サービスと著作権の関係

検索サービスでは著作権法21条の「複製」が行われていますが、「これが著作権侵害にあたるかどうか」についてアメリカと日本の状況を確認してみます。

アメリカの場合

アメリカでは 2006年の裁判では、Googleは著作権を直接侵害していない、Googleには複製と公衆送信に関する黙示的ライセンスがある、Googleの利用行為はフェア・ユース(米国:著作権法107条)に該当するなどとして、裁判所は原告の訴えを退けました。

日本の場合

日本では2009年(平成21年)の著作権法改正で「著作権法 47 条の6」が追加され、検索サービス提供者がサービスを提供する際に行われる複製、翻案について権利者の許諾を得る必要がなくなりました。

著作権法第47条の6 (送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等)

公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の 送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下この条において同じ。) を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従って行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物(当該著作物に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあっては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限る。)について、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識 別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物(当該著作物に係る当該二次的著作物の複製物を含む。以下この条において「検索結果提供用記録」という。) のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化にあっては、国内で行われたとし たならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたときは、その後は、当該検索 結果提供用記録を用いた自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つてはならない。

記録又は翻案は検索結果の表示用のデータのことで、サムネイル、プレビュー、ページのキャッシュ等が該当します。

検索エンジンの目的

平成21年度改正は、文化審議会著作権分科会における審議結果を踏まえたもので、このレポートに「検索エンジンの目的」に関しての記述があります。

平成 21 年 1 月「文化審議会著作権分科会報告書」60頁

「検索エンジンが、オリジナルのウェブサイトに取って代わるものとなり、権利者の利益に悪影響を及ぼすことがないよう、その目的については、利用者の求めに応じ著作物の所在情報を提供し、著作物の内容の紹介を通じて、その著作物が存在するオリジナルのウェブサイトへの誘導を専ら目的とするものと定義するのが適当と考えられる。」

この記述から誘導が行われないような記事の全文を掲載する行為は許されないと考えるのが妥当でしょう。

情報の収集、整理及び提供の基準

著作権施行令7条5項

第7条の5 法第47条の6(法102第1項において準用する場を含む。第2号において同じ。)の政令で定める基準は、次のとおりとする。

  • 1 送信可能化された情報の収集、整理及び提供をプログラムにより自動的に行うこと。
  • 2 文部科学省令で定める方法に従い法第47条の6に規定する者による収集を禁止する措置がとられた情報の収集を行わないこと。
  • 3 送信可能化された情報を収集しようとする場合において、既に収集した情報について前号に規定する措置がとられているときは、当該情報の記録を消去すること

送信可能化された情報の収集を禁止する措置の方法

検索サービス提供者は、コンテンツの提供者によって情報の収集を拒否する措置がとられている場合には、その情報を収集しないものとします。具体的には検索エンジンはrobots.txt によるか、ロボット検索防止タグをコンテンツに記載する方法により情報の収集を拒否することが出来ます。

著作権法施行規則

第4条の4 令第7条の5第2号の文部科学省令で定める方法は、次に掲げる行為のいずれかを、法第 47条の6(法第102条第1項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。) に規定する者による情報の収集を禁止する措置に係る一般の慣行に従って行う方法とする。

  • 1 robots.txtの名称の付された電磁的記録(法第31条第2項に規定する電磁 的記録をいう。次号において同じ。)で送信可能化されたものに次に掲げる事項を記載すること。
    • イ 法第47条の6に規定する者による情報の収集のためのプログラムのうち情報の収集を禁止するもの
    • ロ 法第47条の6に規定する者による収集を禁止する情報の範囲
  • 2 HTML(送信可能化された情報を電子計算機による閲覧の用に供するに当たり、当該情報の表示の配列その他の態様を示すとともに、当該情報以外の情報で送信可能化され たものの送信の求めを簡易に行えるようにするための電磁的記録を作成するために用いられる文字その他の記号及びその体系であって、国際的な標準となっているものをいう。)その他これに類するもので作成された電磁的記録で送信可能化されたものに法第47条の6に規定する者による情報の収集を禁止する旨を記載すること