いきているくうかん ――えいがくうかんろんへのじょきょく
生きている空間 ――映画空間論への序曲

冒頭文

ヘーゲルの弁証法が生れる周囲には、その頃の青年ドイツ派ロマン的皮肉(イロニー)があると考える人々がある。ロマン的皮肉とは、ヘーゲルの友人のゾルゲルで代表されるところの一つの表現、自分達の凡ての行いや言葉のすぐそばに、「黙ってジッと自分を見つめている眼なざし」があると云う一つの不安と怖れである。自分の反省の中にある、限りない圧迫感である。自分の中に、いつでも自分をすべりぬけて、自分を見いる眼があるこ

文字遣い

新字新仮名

初出

「シナリオ」1951(昭和26)年1月

底本

  • 増補 美学的空間
  • 叢書名著の復興14、新泉社
  • 1977(昭和52)年11月16日