なのはなはあかい
菜の花は赤い

冒頭文

一 かうと思つたらどうしてもそのことをやり遂げないと承知できない人物がゐる。 やり遂げる意志の力はまことに見あげたものであるが、「かうと思ふ」、その「かう」が問題であつて、結果の是非善悪はまたおのづから話が別であらう。 だが、ともかくも、さういふタイプの男としてすぐ私の眼に浮ぶのは、おそらく諸君の多くはその名前を聞かれたこともないであらう奥山恩といふもう初老に近い国文

文字遣い

新字旧仮名

初出

「別冊文芸春秋 第二十五号」1951(昭和26)年12月25日

底本

  • 岸田國士全集18
  • 岩波書店
  • 1992(平成4)年3月9日