フランスやくしゃのうらおもて |
仏蘭西役者の裏表 |
冒頭文
日本でこそ、その昔は河原乞食とまで蔑まれ、大正の代にあつてすら、未だに芸人扱ひを受けてゐるわが俳優も、仏蘭西などでは、今も昔も、さぞ、威張つたものであらうと、かう思ふ人もあらうが、どうしてどうして、ルイ十四世大王の寵遇を一身に集めてゐた一代の果報者、モリエールさへ、一公爵が、その頭を抱いて撫でまわすに任せ、遂に釦の角で顔を擦りむいたほどである。 当時の学僧ボッスュエは、演劇の風教問題を論
文字遣い
新字旧仮名
初出
「演劇新潮 第一年第八号」1924(大正13)年8月1日
底本
- 岸田國士全集19
- 岩波書店
- 1989(平成元)年12月8日