ぶんがくかぎきょくか |
文学か戯曲か |
冒頭文
人道主義者ロマン・ロオランはまた民衆劇運動の唱道者である。その著書『民衆劇論』はなかなか傾聴すべき議論であつて、当時一部の活動家を刺戟して、危くソフォクレスの時代を夢想せしめたことは事実である。 しかも彼れロオランは、例によつて、一理論家たるに甘んぜず、名著『ジャン・クリストフ』を編んだ如く、こゝにまた近代悲劇数篇を綴つて普ねく世に問うたのである。 此の『狼』はその一つ。
文字遣い
新字旧仮名
初出
「演劇新潮 第一年第八号」1924(大正13)年8月1日
底本
- 岸田國士全集19
- 岩波書店
- 1989(平成元)年12月8日