パリそびょう
巴里素描

冒頭文

ヴォルテエル河岸 霧雨。——外套の襟を立てる。 ——いくら……これ? ——ラ・ハルプの文学史……六十法。 ——さよなら。 小蒸気の笛。 ——危ない、滑りますよ、奥さん。     サン・ミシェル街 新調のズボンが短か過ぎる。 (また、一人で飯を食ふのか) ——おい、どうした。 ——うるさい。 マロニエ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新小説 第二十九年第十一号」1924(大正13)年11月1日

底本

  • 岸田國士全集19
  • 岩波書店
  • 1989(平成元)年12月8日