じもんじとう ――いわゆる「しんかんかくは」のために――
自問自答 ――所謂「新感覚派」の為めに――

冒頭文

僕は未だ嘗て「余は新感覚派なり」と自称した覚えはない。また、人が「彼らは新感覚派をうち立てようと努力してゐる」と云ふのに対して、「然り」と云つた覚えもない。 処で、最近、新聞や何かで、大分「新感覚派」がやつつけられてゐるのを見て、「おれは一体、新感覚派なのか知ら」と自ら問ふた次第である。 文芸時代の同人は大部分新感覚派であるといふのが定評であるらしい。大部分と云ふからには例外も

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸時代 第二巻第四号」1925(大正14)年4月1日

底本

  • 岸田國士全集19
  • 岩波書店
  • 1989(平成元)年12月8日