まくはひらかない
幕は開かない

冒頭文

僕は嘗て『戯曲時代』といふ一文を『演劇新潮』に書いた。猫も杓子も戯曲に筆を染める時代といふ意味でもあり、舞台にかゝらない戯曲が、活字としてのみの存在を認められる時代といふ意味でもあつた。そしてかういふ時代は、古今東西にその例を見ない処であり、かういふ現象は、何かの潜在理由があるからであり、且つ、早晩、此の現象から何か面白い結果が生れさうだといふことも暗示して置いた。 処が、その後、依然『

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸日本」1925(大正14)年5月1日

底本

  • 岸田國士全集19
  • 岩波書店
  • 1989(平成元)年12月8日