はいゆうのそしつ |
俳優の素質 |
冒頭文
昔から俳優の素質を論じる場合に、誰でも「感性」を第一に挙げてゐるが、これはつまり、他の芸術家の如く、一方に於て同じ程度の「想像力」を必要としない結果、「感性」の必要が著しく目立つからであらう。 ある演劇論者の如きは、俳優には「感性」さへあれば「知力」は不必要だとまで主張したくらゐである。 なるほど、俳優がある人物に扮する場合、その「役の解釈」に、さほど頭を使ふ必要のなかつた時代
文字遣い
新字旧仮名
初出
「演劇新潮 第一巻第二、三号」1926(大正15)年5月1日、6月1日
底本
- 岸田國士全集20
- 岩波書店
- 1990(平成2)年3月8日