げきてきでんとうとげきてきいんしゅう |
劇的伝統と劇的因襲 |
冒頭文
批評家がいろいろの立場から作品の価値を論じることは自由であるが、文芸の種目(ジャンル)に関して、聊かも定見のないことを暴露するに至つては、甚だ心細い。 今日文芸批評の筆を取る人々のうちで、自分には詩の批評はできないと公言し、または、無暗にさうきめてかかつてゐる人が多いやうである。そして、世間は勿論、文壇のうちでさへ、誰もそれを不思議だと云はず、「詩が解る」といふことは、「文学が解る」とい
文字遣い
新字旧仮名
初出
「女性 第九巻第六号」1926(大正15)年6月1日
底本
- 岸田國士全集20
- 岩波書店
- 1990(平成2)年3月8日