「ついおく」によるついおく
「追憶」による追憶

冒頭文

八月号で芥川竜之介氏の「追憶」といふ文章を読み、誰でも同じやうな追憶をもつてゐるものだといふことを知り、転た感慨を催した次第であるが、昨日、K社の山本氏に会ひ、たまたま芥川氏の近況を知ることを得た。それで本誌への責ふさぎかたがた、この一文を草することにした。病床にある同氏への御見舞ともなればこの上もない幸せである。     幼稚園 僕の通つた幼稚園は、四ツ谷の津の守坂にあつた。今はもう

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸春秋 第四年第九号」1926(大正15)年9月1日

底本

  • 岸田國士全集20
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年3月8日