まくがおりて
幕が下りて

冒頭文

自分が芝居の実際方面に関係してから、まだ半年もたゝないのだが、その間に、色々の経験もなめた。理窟だけを並べてゐた時代には、そんなでもあるまいと思つてゐた劇壇の内情を見聞きするにつけて、私は、自分ながら、飛んでもない処へはまりこんだなといふ気がし出した。「血があれる」といふ言葉が本当によく当つてゐるやうな、さういふ雰囲気を感じ出した。かういふ世界で、本当に自分の仕事をして行く人、何か知ら「とらはれな

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京日日新聞」1927(昭和2)年4月24日、26日、27日

底本

  • 岸田國士全集20
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年3月8日