「あかるいぶんがく」について
「明るい文学」について

冒頭文

甲は云ふ——黒ずんだ文学にも少し飽きた。もつと明るい、赤味を帯びてゐても、青味を帯びてゐても、それはいゝ、もつと明るい文学が欲しいね。 乙が答へる——人生は黒ずんだものだ。 甲——明るいところもあるよ。 乙——それは、人生を深く観ないからだ。人生を真面目に考へないからだ。苦悶の無い人生は無意義だ。 甲——待つてくれ。明るいところも深く観れば暗いといふのだね。それなら、暗い処も、深く観れば、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「創造日本 八月号」1927(昭和2)年8月1日

底本

  • 岸田國士全集20
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年3月8日