「チロルのあき」じょうえんとうじのおもいで |
「チロルの秋」上演当時の思ひ出 |
冒頭文
「チロルの秋」は私の第二作であつた。それが、大地震の翌年、たしか大正十三年の十月か十一月かに、新劇協会の人々の手で帝国ホテルの演芸場で上演されたのが、私の処女上演であつた。正宗白鳥氏の「人世の幸福」と久米正雄氏の「帰去来」とがプログラムに並んでゐた。 正直に云へば、私は自分の処女上演について余り香ばしい思ひ出を懐いてゐないので、なるならば語り度くない気持が非常に強い。といふのは、私はそこで作
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文章倶楽部 第十二巻第十一号(戯曲研究号)」1927(昭和2)年11月1日
底本
- 岸田國士全集20
- 岩波書店
- 1990(平成2)年3月8日