じゅうにがつてきかんそう |
十二月的感想 |
冒頭文
私は平生毛筆を使はない。墨をするのが面倒なのと、硯箱が場所を取るからである。それよりも第一、手が自由に動かない厄介さを知つてゐるからであらう。 私はまた万年筆を好まない。ペン先をインキ壺に浸す、あの伸びやかな気持がなく、書かれた文字の濃淡がもつ、あの特殊なリズムを失ふからである。それよりも第一、買ふしりからどこかで落して来ることがわかつてゐるからかもしれない。 私は洋服を長く著
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文芸春秋 第六年第一号」1928(昭和3)年1月1日
底本
- 岸田國士全集20
- 岩波書店
- 1990(平成2)年3月8日