ろくごうき
六号記

冒頭文

どうにもならぬことを、ひとりぶつぶつ云つてもしようがない、と思ふやうになつてゐることは事実である。誰でも考へてゐるやうなことを、わざわざ口に出して云ふのは、野暮の骨頂だ、といふ風にも教へられてゐる。が、しかし、どうにもならないとは、一体、いつからきまつてしまつたのであらう? 当り前でないことが当り前で通るやうになつたのは、誰もが考へてゐるだけで、公然とそれを云はないからではないかと、私は近頃しきり

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸懇話会 第一巻第二号」1936(昭和11)年2月1日

底本

  • 岸田國士全集23
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年12月7日