しばいとぼく
芝居と僕

冒頭文

一 今更回顧談でもないが、今度「現代演劇論」といふ本を出したあとで、僕は、なんだかこれで一と役すましたといふ気がふとしたことは事実である。これからまだあとにどんな役がひかへてゐるにせよ、それがまた今まで以上に満たされない結果に終るかも知れぬにせよ、ともかく、今日まで十数年の間、僕は、芝居のためにするだけのことはし、僕の能力で齎し得るだけの成果は収めたつもりである。もつとしたいこともあつた、や

文字遣い

新字旧仮名

初出

「劇作 第六巻第一号~第九号」1937(昭和12)年1月1日~年9月1日

底本

  • 岸田國士全集23
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年12月7日