『じゅうにがつ』
『十二月』

冒頭文

これは本誌(前同)四月号の頁をあらまし占領した小山祐士君の力作だ。前に、川口、伊賀山両君の大作といひ、当今、百枚に余る作品を自由に発表し得る幸運は、劇作同人諸君に限り与へられてゐるの観がある。 しかも、『十二月』は、なかなかの佳作である。粗末な力作は、愚劣な小品より罪が重いのであるが、見事な大作は、片々たる傑作よりも声を大にして褒めたくなるのが人情だ。その人情を割引して、僕は、小山君の作

文字遣い

新字旧仮名

初出

「劇作 第二巻第五号」1933(昭和8)年5月1日

底本

  • 岸田國士全集22
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年10月8日