コクトオの『こえ』そのたをきく
コクトオの『声』その他を聴く

冒頭文

最近、仏蘭西版の新しい舞台のレコオドを幾枚か聴く機会を与へられた。 コクトオの「声」はベルト・ボヴィイといふ女優、ミルボオの「事業と事業」を例のフェロオヂイ、ラシイヌの「アンドロマアク」を名悲劇女優バルテといふ風に、僕の耳と心は、再び、十年前の巴里へ舞ひ戻つた次第だが、僕は今ここで、この晩の楽しく、且つ、胸を打たれた数刻の印象を物語らうとするのではない。 何よりも先に云ひたいこ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「劇作 第二巻第五号」1933(昭和8)年5月1日

底本

  • 岸田國士全集22
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年10月8日