げんだいげきのないにほん
現代劇のない日本

冒頭文

日本中の劇場で、これまで「現代劇」をやつたことがないと云へば、確かにそこ此処から異論が出るだらうと思ひますが、私は、それでも、「日本は現代劇なし」と明言します。 その理由はかうです。 先づ、これまで、「新劇」と呼ばれてゐた、歌舞伎でも新派でもない芝居——それは概して、西洋劇の翻訳と若干の創作劇を含むものですが——は、これを脚本として見れば兎も角、舞台で観ると、「演劇」としての大

文字遣い

新字旧仮名

初出

「婦人之友 第二十八巻第三号」1934(昭和9)年3月1日

底本

  • 岸田國士全集22
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年10月8日