じょゆうリイヌ・ノロのこと |
女優リイヌ・ノロのこと |
冒頭文
最近 L'Assommoir といふ仏蘭西の発声映画を見る機会を得た。ゾラの小説を可なり忠実に脚色したものであり、画面全体は、例の自然主義的ロスリイに堕してはゐるが、出演俳優が悉く仏蘭西の舞台俳優であり、それらの俳優が、思ふ存分、「舞台的演技」を試み、監督がまたそれに見惚れた如くカメラを向けさせてゐる点で、一種の興味を惹いた。 が、何よりも僕を感動させたのは、この物語の女主人公ジェルヴェ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「劇作 第三巻第四号」1934(昭和9)年4月1日
底本
- 岸田國士全集22
- 岩波書店
- 1990(平成2)年10月8日