えんげきのせいめいとえんげきび
戯曲の生命と演劇美

冒頭文

日本の新劇が、従来西洋の芝居をお手本として「新しい演劇美」を取り入れようとした事実は、今日誰でも知つてゐることであるが、西洋の芝居のどこが面白いかといふことになると、それは誰もはつきりしたことが云へず、結局、脚本の文学的価値と、「演出」なる特殊な技術にその重心をおいて、万事が解決されたものの如く考へてゐたのである。勿論、俳優の演技も問題にされないわけではなかつたが、これは要するに「演出家」の意図に

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文学 第二巻第四号」1934(昭和9)年4月1日

底本

  • 岸田國士全集22
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年10月8日