“にんじん”をみて |
“にんじん”を観て |
冒頭文
映画「にんじん」をみて、第一に感じたことは、監督デユヴイヴイエが、単にルナアルの小説及び戯曲からその主題を藉りたといふばかりでなく、ルナアル流の「文章的表現」を、映画のリズムによつて組立てやうと試みてゐることだ。 「イメージの猟人」たる原作者は或る意味に於て、キヤメラの魂に通ずるものがあるかも知れぬが、悲しい哉、暗示と省略の二点で、映画は文学に一歩を譲らねばならぬ。 但し、ルナアルの作
文字遣い
新字旧仮名
初出
「時事新報」1934(昭和9)年4月27日
底本
- 岸田國士全集22
- 岩波書店
- 1990(平成2)年10月8日