にっきについて
日記について

冒頭文

私は日記をつけない。なぜつけないかと訊かれると、返事に困るが、どうもつける気がしない。それでも今までに、つけてゐたらよかつたと思ふことは思ふ。すると、結局、私の中に、日記をつけたくてもつけさせない何ものかがあるのか、または、つけないではゐさせないやうな何ものかが欠けてゐるのであらう。 面白い日記をつけるやうな人物は、みんな一とかどの人物だとも考へられるが、一とかどの人物でなくとも、およそ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「大阪朝日新聞」1935(昭和10)年1月12、15、16日

底本

  • 岸田國士全集22
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年10月8日