えんげきろんのいちほうこう
演劇論の一方向

冒頭文

凡そ、如何なる芸術と雖も、若干の「法則」に従はないものはない。と同時に、それらの「法則」を無条件に受け容れることは、甚だ「保守的な」態度と考へられてゐる。新しい芸術運動は、常にそれらの法則に対する反抗であり、又は、既成の法則に代る別個の法則の発見を目指してゐたのを見てもわかる。 偶々、あらゆる法則の無視といふ宣言がなされたにしても、何かを「創り出す」ためには、既に、何かに「拠る」ことが必

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 第三十二年第三号」1935(昭和10)年3月1日

底本

  • 岸田國士全集22
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年10月8日