せかいにんじょうのぞきめがね
世界人情覗眼鏡

冒頭文

七 日本語の研究をしてゐるポリテクニツクの学生を紹介された。採鉱や金の専攻らしい。青年の家庭には、父君が外国貿易商であるせゐか、いろ〳〵珍しい人物が出入してゐた。 お茶の会をするといふので、僕は出かけて行つた。ほんたうをいふと、僕はあまりかういふ場所を好まない。殊にパリへ流れ込んで来てゐる外国人が、容易に出入できるやうな家は、たゞ雑然たるエキゾチズムの刺激があるばかりだ。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「東京朝日新聞」1928(昭和3)年1月31日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日