ぎきょくじだいさる
戯曲時代去る

冒頭文

「戯曲時代」といふ言葉の定義は僕が嘗て下したところによると「雑誌の創作欄が、昨日までは小説のみで埋められてゐたのに反し、読み物としての戯曲が、可なりの頁数を占めるやうになつた今日の時勢」に外ならぬのであるが、さういふ時勢も昨年の半頃から、そろ〳〵また遷りかけてゐるやうに見える。調べて見ないとはつきりしたことは云へぬが、兎に角、二月号の大雑誌は申し合せたやうに戯曲を一篇も載せてゐない。これは勿論偶然

文字遣い

新字旧仮名

初出

「読売新聞」1928(昭和3)年1月28日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日