みてわすれる
観て忘れる

冒頭文

自分で思ひ立つて映画を観に行つたことはまづないと云つていゝ。大ていは女たちの御招伴である。これは映画と女とを一緒に軽蔑してゐるやうに聞えるが、決して女も映画も軽蔑してゐるわけではなく、全く無精だからである。——芝居の方はどうかと訊かれると、これはまた一層ひどい。一年に二三度あるかなし、その代り、これは自分で思ひ立つ。 評判になつた封切ものなど、家の誰かゞ観て来て話をするのだが、つひそのま

文字遣い

新字旧仮名

初出

「映画時代 第四巻第四号」1928(昭和3)年4月1日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日