トリスタン・ベルナアルについて |
トリスタン・ベルナアルに就いて |
冒頭文
彼はポルト・リシュやベルンスタンと同じく猶太の血を享けてゐる。しかも、仏蘭西人らしい特質の最も多くを備へてゐる猶太作家である。 彼は甚だ金持である。スポーツ、わけても競馬と拳闘の熱愛者である。その上、評判の交際家である。その生涯を通じて親友の悉くを失つた一代の偏屈屋ジュウル・ルナアルさへ、彼だけには腹を立てなかつたらしい。 彼は作家として、少しも野心的な仕事は残してゐない、寧ろ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「近代劇全集 第十五巻」第一書房、1928(昭和3)年10月10日
底本
- 岸田國士全集21
- 岩波書店
- 1990(平成2)年7月9日