ファルスのきんだいせい
ファルスの近代性

冒頭文

井汲清治君の説によると、悲劇は貴族的、喜劇は中産階級的、そしてファルスは民衆的であるとのことである。 この観方も面白いし、ほぼ同感であるが、私が演劇の一様式としてこのファルスに興味をもつのは、必ずしも、さういふ「階級的」な意義によるのではない。 もともと、Farce を笑劇と訳すのは、Comédie を喜劇と訳すやうに、甚だ文学的でないやうに思はれるが、これも時代を経るに従つて

文字遣い

新字旧仮名

初出

「悲劇喜劇 第三号」1928(昭和3)年12月1日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日