アカデミイのかきとり
アカデミイの書取

冒頭文

ナポレオン三世の宮中では、皇后ウージェニイを中心に、当時の錚々たる文学者を交へた特色のある集会が行はれたが、その席で、何時からともなく、「秘書役ごつこ」といふ遊戯がはじまつた。 ある日のこと、プロスペエル・メリメが出題者になつて、有名な「アカデミイの書取」をやることになり、競技者を募つたところ、出題者が出題者だけに、多くの廷臣たちは、いろいろ口実を設けて、尻ごみをするばかりだつた。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「ふらんす 第五巻第一号」1929(昭和4)年1月1日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日