アンリエツトのてんちりょうようにっき
アンリエツトの転地療養日記

冒頭文

二月三日(水曜)曇 いよいよ巴里(パリー)を離れることになつた。 朝八時、タクシイで、ケエ・ドルセエの停車場に行く。寒い。 病気で転地療養をするのに、大袈裟な用意なんかする必要はないといふパパの意見。 それでも、あゝいふ人の集るところだから、トアレツトのひと通りはといふママの意見。 ルイズ叔母さまも、ママの肩をおもちになる。 汽車の中で、正午の体温を計る。三十七度四分、気分はい

文字遣い

新字旧仮名

初出

「令女界 第八巻第二号」1929(昭和4)年2月1日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日