さっかやまもとにんげんゆうぞう
作家山本人間有三

冒頭文

「作は人なり」といふ言葉は、言ひ古された言葉だが、これは正面から解釈をすると当らぬ場合がある。作品の一つ一つを取つてみても、ある作家の作品全体についてみても、この人にしてこの作ありとは、聊か意外だと思ふやうなことがある。それはつまり、ある作家は、自分のうちに「有る」ものを直接に現はさず、自分の心に「映る」ものを、好んで表面に出さうとするからである。その「映り」方や「出し」方に、その作家の「人」が浮

文字遣い

新字旧仮名

初出

「現代日本文学全集第二十篇 改造社文学月報第三十六号」改造社、1929(昭和4)年12月13日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日