ぎきょくおよびぎきょくさっかについて
戯曲及び戯曲作家について

冒頭文

レオン・ドオデが、ジュウル・ルナアルの芸術を指して、「小ささの偉大さ」と呼んでゐるが、そのジュウル・ルナアルは、芸術家としてのエドモン・ロスタンをまた、「月並で、しかして、偉大」と評した。この二つの「偉大」といふ言葉には、それぞれ、評者の「使ひ癖」も現はれてゐるらしいが、兎も角、このパラドクサルな讃辞は、私に、作家の稟質といふ問題を考へさせると同時に、芸術の本体について少しく視野を拡げさせてくれる

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 第二十九年第六号」1932(昭和7)年6月1日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日