しんげきのから |
新劇の殻 |
冒頭文
新劇に「型」などといふものがある筈はないのだが、事実、今日のあらゆる新劇団——素人の試演と称するものをも含めて——は、もう既に、一つの共通な「癖」をもつてゐる。その「癖」とは、「型」とまでは行かぬ「殻」のやうなもので、誰がどんなに工夫をしても、それからは脱けきれない、いはば、運命的な関節不随症なのだ。 私は、これを、俳優の演技についてのみ云ふのではない。新劇のあらゆる面、あらゆる要素を形
文字遣い
新字旧仮名
初出
「劇作 第一巻第六号」1932(昭和7)年8月1日
底本
- 岸田國士全集21
- 岩波書店
- 1990(平成2)年7月9日