げきだんさゆうてんぼう
劇壇左右展望

冒頭文

○左、劇文学の領域 近頃、純文学と大衆文学の問題が各所で論議されてゐるやうだが、これは、所謂「文芸上の問題」とはなり得ない一個の文壇四方山話にすぎないので、「純文学では飯が食へん」とか、「大衆文学を書くのにもやはり才能がいる」とか、何れも、動かすべからざる真理に違ひないが、今まで、どの時代の文学者も、そんなことは嘗て言はなかつたほど、当り前のことなのだ。まして、「純文学の勢力が衰へ、大衆文学

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮 第二十九年第十号」1932(昭和7)年10月1日

底本

  • 岸田國士全集21
  • 岩波書店
  • 1990(平成2)年7月9日