じょせいのちから |
女性の力 |
冒頭文
私は最近、ある本を読んで非常に感動をうけた。それは長島癩療養所勤務の女医小川正子さんの手記「小島の春」といふ本である。 瀬戸内海に近い方の田舎にはまだ医療の手の届かない癩患者が多数をり、この病気が決して遺伝性のものではなく、まつたく伝染性のものだといふことが知られてゐないために、患者自身もその家族のものも、たゞ世間をせばめて悲惨な生活を送つてゐるところへ、小川さんは殆ど常人の企て及ばない
文字遣い
新字旧仮名
初出
「河北新報(夕刊)」、「新愛知」1939(昭和14)年2月16日
底本
- 岸田國士全集24
- 岩波書店
- 1991(平成3)年3月8日