せいねんのほこりとたしなみ ――ちからとしてのぶんか だいよんわ
青年の矜りと嗜み ――力としての文化 第四話

冒頭文

一 矜りとは自ら恃(たの)むところがあることであります。これさへあれば、何ものも怖れずといふ信念です。自負と云ひ、自尊と云ひ、いづれも、己をもつて高しとする精神でありますが、これはむしろ、相手に向つて自分を譲らないことで、いはば競争心の現れであります。しかし、矜りと云ひ、矜持と云ふのは、どちらかといへば、自分自身に対して、しつかりした信頼をもち、いやしくも自分で自分を辱かしめないだけの、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「力としての文化――若き人々へ」河出書房、1943(昭和18)年6月20日

底本

  • 岸田國士全集26
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年10月8日