じゅうねんのそくせき
十年の足跡

冒頭文

文学座の歴史はまだ十年であるが、かういふ性質の劇団で十年の一貫した歴史をもつことはまづ珍しい部類に属すると思ふ。 文学座はその間になにをしたか。どんな仕事を残したか。私は直接責任ある地位を比較的早く退いたのであるが、しかし、最も注意深くその歩みを見守つてゐた人間の一人として断言し得ることは、この劇団こそ、あらゆる悪条件のもとで一番正しい演劇の道を辿り、これまでの日本の芝居が到達しなかつた

文字遣い

新字旧仮名

初出

「「文学座十周年記念」公演・歳月パンフレット」1948(昭和23)年1月1日

底本

  • 岸田國士全集27
  • 岩波書店
  • 1991(平成3)年12月9日