しんげきのれいめい |
新劇の黎明 |
冒頭文
一 劇文学の夜は永く続いた。黙阿弥を最後として、わが国には、ほんたうに劇作家といへる劇作家が現れてゐない。ほんたうの劇作家とは、その名前で民衆を劇場に引き寄せ、独特の思想と技術によつて舞台の生命を創造しながら、民衆と共に愉しむことのできる才能をいふのである。 もちろん、ある意味でいくらかの手腕と抱負とを示した岡本綺堂のやうな人はゐるけれども、現代の演劇にその足跡を残すまでの業績
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文芸往来 第三巻第七号」1949(昭和24)年7月1日
底本
- 岸田國士全集27
- 岩波書店
- 1991(平成3)年12月9日