人物 宍戸第三 毛谷啓 同京子 目羅冥 同宮子 甲斐加代子 婦人 第一場 東京近郊の住宅地——かの三間か四間ぐらゐの、棟の低い瓦家——「貸家」と肉太に書いた紙札が、形ばかりの門柱を隔てて、玄関の戸に麗々しく貼つてある。四月上旬の午後。 その門の前で、立ち止つた夫婦連れ、結婚一二年、今に今にと思ひながら、知らず識らず生活にひしがれて行く無産