『ものいうすべ』のじょにかえて
『物言う術』の序に代へて

冒頭文

われわれが昔からその実体をもたぬわけではないのに、それがひとつの概念として規定されず、従つて、それを指し示す共通の言葉が生れなかつた、といふ例は、枚挙にいとまがない。 西欧文明の移入が、そのことをはつきりわれわれに覚らせた。 芸術の領域に於ても、われわれはしばしば新造語の助けをかりて何事かを語らねばならぬが、それらの多くは西欧の言葉の翻訳であり、そのために、思想がつねに借物の観

文字遣い

新字旧仮名

初出

「物言う術――俳優術第一歩」世界文学社、1949(昭和24)年12月10日

底本

  • 岸田國士全集28
  • 岩波書店
  • 1992(平成4)年6月17日